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敗北の叫びが奈落ジャンクション内にこだまする。
オバの肉体と精神は、自宅のトイレへと強制送還された。
勇次の必殺技により、家に還ったのである。
【――――――――】
その刹那、オバは囁くように呟いた。
『いってらっしゃい』。
オバは別れ際、勇次とユカリに『いってらっしゃい』と確かに言った。
おそらくその声は二人には届いていない。しかし特筆すべきはそこではない。
数千年前の古い概念を、オバは覚えていた。
この事実から察するに、オバもまた、オバなりのやり方で現代に抗っていたのだろう。
彼女もまた、移ろいすぎた時代の被害者だったのかもしれない――。
透明拘束道路『奈落ジャンクション』。
操縦者が不在となったクルマリオンたちは浮力を失い、奈落の底へと次々に消えていく。
一方で、風に煽られて踊る横断旗は、敗北を認めるかのごとく青緑色に輝き始めていた。
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