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「とおりゃんせええええっーーーー!!」
勝利の雄叫びを上げる勇次。
その感情と連動し、《アルト=リコーダー》のファンファーレが高らかに鳴り響く。
――パアーパーパー・パーパパパア……
「やったああああっ!」
無邪気に飛び跳ねるユカリ。
その《ガラパゴス=テレフォン》からも、勝利の着信メロディが流れ出す。
――パーパパ・パララ・パラパーパア……
二人は戦闘に勝利した。
前後左右に、二人を遮るものはない。
「勇次……」
「ユカリ……」
二人は、ゆっくりと白線上を歩いた。
まるでヴァージンロードを渡るがごとく、その一歩一歩が神聖さを増していく。
勝利に貢献した武器たちが、祝福の音色を送り続ける。
――パアーパーパー・パーパパパア……パーパパ・パララ・パラパーパア……
やがて二人は、横断に成功した。
渡り終えたとき、勇次は静かに天を仰いだ。
「チャリィ……着いたよ、学校に」
空には、青が戻っていた。
奈落の底から吹き上がる風が、春特有のさわやかなものへと変わる。
微熱を孕んだその一吹きが、きっとチャリィの両輪を満たしてくれることだろう。
勇次の想いは、風に乗って路肩へと運ばれた。
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