エイ会話スイミングスクール

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「いらっしゃいませぇ~。それじゃあ授業はじめるぞ~」  教師、現る。  教師の名は、用務(ようむ)公太郎(こうたろう)(46)。  学校用務員から教師に昇格したという異例の経歴を持つモンスターティーチャーである。  青いスーツに水中メガネ。背中には大きな酸素ボンベを装備している。 「本日の一次元目は、『エイ語』だ」  用務、宣告する。  エイ語とは、その名前のとおり、海洋生物『エイ』の言語を解き明かす授業である。    なぜ、エイなのか?  宇宙開発研究によって得られた成果のひとつに、こんなレポートがある。 『火星には、大量のエイ=リアン(※エイの最終進化形態とおぼしき存在)が陸地に住み着いており、継続的に繁殖を繰り返している模様。その数は億単位』  つまり、人間が火星で暮らすには、先住民であるエイ=リアンたちとの交渉コミュニケーションが避けられないのである。  そのため現代の小学校では、必修科目としてエイ語の学習が義務付けられているのだ。
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