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「今日の出席者は未来坂と夢町か……。よく来たな、先生はうれしいよ」
教壇に立つやいなや、不敵な笑みを浮かべる用務。
挨拶も早々に、黒板のほうを向き、白いチョークをその手に取った。
――カッ、カッ、カッ……
黒板に描かれたのは、大きな二重円と六角形。
俗に『魔法陣』と呼ばれる類のものである。
「本日の演目は、『エイ会話』の実践練習だ。これから実際に、一匹の《エイ=リアン》とコミュニケーションをおこなってもらう」
「なんだと!?」
勇次、動揺する。
まだ基本的なエイ単語も覚つかない勇次にとっては、酷な授業内容であった。
「大丈夫、落ち着いて。あたしが全力でサポートするわ」
一方で、ユカリは冷静に勇次をたしなめた。
何を隠そう、ユカリの得意科目はエイ語。
日常会話レベルなら、なんとかなる自信がある。
「では、これより授業を開始する! 《海中フィールド・システム》、作動!」
いきなり大声を出した用務は、教壇の机を「バンッ!」と叩いた。
すると、二人の背後にあるロッカーや掃除用具箱から、大量の水が流れ出す。
――ザバアアアアアア……
「な、なんなの!?」
ユカリ動揺する。
今日の授業内容が恐ろしいものであることに、一歩遅れて気が付いた。
「大丈夫だ、落ち着け。俺が全力でサポートする」
勇次、フォローする。
エイ語は苦手だが、肺活量には自信がある。
「エイ=リアンに警戒心を与えないために、ちょいと環境を整えるだけだ。安心しなっせ」
用務、説明する。
現代の小学校では、宇宙での無重力歩行に慣れるための訓練設備として、校舎内に海水を送り込むシステムが導入されている。
用務は、そのシステムを起動させたのだ。
「では、本日のスペシャルゲスト、エイ=リアンさんにご登場いただこう!」
間髪入れず、黒板の魔法陣に手をかざして震わせ始めた用務。
パッーと輝きを示す黒板。
その中央からは、一匹の海洋宇宙生物が、ずるずると身体をくねらせ現れる――
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