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【きゅるっぴいっー!】
愛らしい表情をキープしたまま、ひたすらに尾ひれをばたつかせるエイ。
「な、なんて言っているんだ……?」
勇次、困惑する。
エイ語が苦手な勇次は、その言葉をまったく理解することができなかった。
「大丈夫。あたしにまかせて」
言いながら席を立つユカリ。
手元の『エイ単語辞書』をパラパラと開き、早速行動に移す。
「まず、お名前を聞いてみるわ」
名前。
それを聞くことが、仲良しになるための第一歩であることを、ユカリは知っている。
『エイ=リアンにも、個性は存在する』。
教科書レベルのその知識を予習したうえでの試み。本当によく勉強している。
「ワッチャ・ネイム?」
ユカリ、質問する。
辞書を片手に、エイ=リアンの固有名称を聞き出した。
【きゅぴぴきゅっぴ、きゅるっぴい】
「……なんて言ったんだ?」
勇次、聞く。
ユカリ、答える。
「『吉田エイ子と申します』」
ユカリ、翻訳する。
敬語の部分までばっちりおさえた安定の通訳力をみせた。本当によく勉強している。
「エイ子か……いい名前だな。よろしく!」
【きゅっぴー!】
エイ子の尾ひれを握り、異生物と速攻で打ち解ける勇次。
人懐っこいエイ=リアンの性質と、偏見をもたない勇次の性格が合致した微笑ましい瞬間であった。
「それじゃあ、いきましょうか」
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