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二人と一匹は、教室を出た。
廊下には、既にひざ下あたりまで海水が浸っている。
他の教室からも水が流れ出していることは明らかであった。
「よし、とりあえずは上を目指そう」
「そうね、早くしないと溺れちゃうわ」
【きゅっぴー!】
「……エイ子は、水中でも呼吸できるのか?」
「『ミセスエイコ、エラ呼吸イズ可能?』」
【きゅっぴー! きゅっぴーのきゅうぴ、きゅっぴ】
「……なんて?」
「『大丈夫』だってさ! むしろ、『水中のほうが得意です』って言ってる」
「なるほど。それなら安心だな」
――パチャパチャパチャ……
水面を踏み歩く二人。
そのスピードは平常時とあまり変わらない。
――ピチョン……ピチョン……ピチョン……
かたや、一本足で器用に歩行するエイ子。
【きゅっぴ、きゅっぴ、きゅっぴ】
その歩みは人間よりも後れをとるが、その一歩一歩が全力である。
「焦らなくても大丈夫だよ」
エイ子のスピードに足を合わせるユカリ。
「そうだぞ。もし何かあったら、俺たちが全力でフォローする」
【きゅっぴ!】
どことなく安堵の表情を浮かべるエイ子。
一同は、最初の階段をのぼり、早々に三階へと上がった。
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