エイ会話スイミングスクール

6/10
前へ
/55ページ
次へ
 二人と一匹は、教室を出た。  廊下には、既にひざ下あたりまで海水が浸っている。  他の教室からも水が流れ出していることは明らかであった。 「よし、とりあえずは上を目指そう」 「そうね、早くしないと溺れちゃうわ」 【きゅっぴー!】 「……エイ子は、水中でも呼吸できるのか?」 「『ミセスエイコ、エラ呼吸イズ可能?』」 【きゅっぴー! きゅっぴーのきゅうぴ、きゅっぴ】 「……なんて?」 「『大丈夫』だってさ! むしろ、『水中のほうが得意です』って言ってる」 「なるほど。それなら安心だな」  ――パチャパチャパチャ……  水面を踏み歩く二人。  そのスピードは平常時とあまり変わらない。  ――ピチョン……ピチョン……ピチョン……  かたや、一本足で器用に歩行するエイ子。 【きゅっぴ、きゅっぴ、きゅっぴ】  その歩みは人間よりも後れをとるが、その一歩一歩が全力である。 「焦らなくても大丈夫だよ」  エイ子のスピードに足を合わせるユカリ。 「そうだぞ。もし何かあったら、俺たちが全力でフォローする」 【きゅっぴ!】  どことなく安堵の表情を浮かべるエイ子。  一同は、最初の階段をのぼり、早々に三階へと上がった。
/55ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加