「平成からの申し送り。」

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「平成からの申し送り。」

「天皇の退位が決まったらしい」 そう私に知らせに来たのは、「明治の神さま」だ。 (しわ)の多い顔には白く長い髭を伸ばし、杖をついているが背筋はピンとしている。勇ましく凛々しいその姿は、生前の「明治天皇」にそっくりだ。 「そうなんだぁ~」 ひょうきんな返事をする私は、こうみえても「平成の神さま」である。雲の上よりさらに上にある「天上界」で、人間たちが暮らす「人間界」を見守る仕事をしている。 神さまに性別はないが、強いていうならその性格から、私は女性よりの神さまだ。自分でいうのもなんだけれど、穏やかで心優しく、平和主義なのだ。 「お前…相変わらず平和ボケしておるな。天皇が退位すれば、年号も変わる。つまりお前の『任期』も『満了』するんだぞ」 「そうなんだ。って、ええぇぇぇ!?」 やっと事の大きさを知る。 任期が満了、ということは私の仕事も終了。 次の年号の神さまに引き継ぐことになる。 「思った以上に早かった…」 2019年4月30日に、「平成」が終わる。 私は任期30年にして、この仕事を終える。 そう思うと、急に焦りが(つの)ってきた。
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