29(承前)

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 敵の装甲車と戦闘ロボットから、腹に響く砲弾の発射音がとどろいた。 「みんな、まだ待て」  オモイのカウントダウンは続く。 「16…15…14」  周囲に砲弾が降り注ぐ轟音と地鳴りのような揺れを感じた。恐怖はない。タツオは雲山改のなかで幻のコックピットに座っていた。操縦桿を握る手には確かに硬質ゴムの反発力が伝わってくる。 「まだまだ待機だ。一撃で決めるぞ」  はるか後方のジャングルの奥から20発を越える小型ミサイルが発射された。タツオはコックピットのなかで全天スクリーンをかけるミサイルの炎を見あげていた。満天の星を焼き尽くすような輝きが、敵守備隊に向かって飛翔していく。タツオは酔ったように叫んだ。 「いくぞ、菱川班、全速力で敵を蹂躙(じゅうりん)せよ」
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