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2月14日
世間一般に、バレンタインデーは特別な日と捉えられるだろう。想い人にチョコレートと共に気持ちを告げる特別な日。まぁ、人によって、その「特別」を享受できるか否かは別問題だが。
そして、僕は目の前の物を見つめながら、果たしてこれはその「特別」に該当するか否かについて、頭を悩ませていた。
バレンタインデーということで、どこか浮わついた空気を他所に、放課後の教室を出る。
向かう先は図書室。目的は、図書委員としての業務を全うするため。勿論、面倒くさいことこの上ない早く帰りたい。
だが、今日に限ってその感情は鳴りを潜めている。
期待していないと言えば嘘になる。落ち着けと自戒すること自体が浮き足立っている証拠である。
そんな風にふわふわしながら目的地に着いた僕は、恐らくほっとしていたと思う。
同じ図書委員の古野さんはいつも通り、僕より先に図書室に来て、静かに本を読んでいた。
古野さんは少し変わった人である。変人と呼んではいけない。
端的に彼女の人となりを表すなら、文学少女の四文字が相応しい。目立たず、物静かな性格であり、こうして図書室で静かに本を読んでいる姿は絵になるほど似合っている。
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