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四、派手な男
陽が中天に昇りきる少し前。
時刻は十一時すこし前。
金富家の裏口から出た皐月を待っていたのは、永田である。
「昨日はすみませんでした。家人にああ言われては帰るほかなく…大丈夫でしたか?」
心底すまなさそうに言う永田に、皐月は昨夜の出来事をどう説明したものかと言葉に詰まる。
「前任者の方から、なにかこの家について伺っていたことはありませんか? その…不思議なことが起こる、とか」
口ごもりつつもそう尋ねた皐月に、永田は「うーん」と考え込む。
「前任者ではありませんが、金富佐波さんから変わったお話を伺ったことがあります」
「どういうお話ですか?」
「この家は、金富の女を捕らえておくための檻──そのようなことを、話されていました。てっきり何かの比喩表現だとばかり」
「檻…」
確かに、そうなのかもしれない。
立派な高い塀も、高台に1棟だけぽつんと建った立地も、まるで内から逃げられないようにしていると見えなくもない。
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