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「そうですね。出来れば、故人の家まで足を運んでいただけたら、と…」
永田の言葉に、皐月は頷く。
「わかりました。どうにかして都合をつけますので、今週末にでも伺います」
「では、先方には私の方から話しておきます」
「よろしくお願いします」
用意のいいことに、永田は大伯母の住所や地図を持って来ていたようで、クリアファイルに入れたそれを皐月に手渡す。
「日時を教えていただければ、ホテルの手配などもこちらでします」
「いえ、そこまでしていただくわけには…」
永田の申し出を固辞する皐月。
「それに、長居するつもりはありませんから。遺言状の開封が終わったら、お暇します」
キッパリと告げる皐月の様子に、永田もそれ以上何も言わなかった。
せっかく約束を取り付けたのに、撤回されては困るからだろう。
話がまとまったところで、今日のところはこれで切り上げることになった。
店先で永田と別れ、皐月は帰路についた。
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