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「…お願い申し上げましたこと、お聞き入れ下さりありがとう存じます」
と、老女はどこか疲れた声で言った。
「本来であれば、内々に済ませなければならないのでしょうが…私どもだけではどうにもなりませんもので」
自らの孫ほども年の離れた客人に対し、老女は縋るように助力を求める。
「ま、乗りかかった船ですしね。ご大層なことが出来るわけじゃないですが、出来ることはしますよ」
気安く答える男に、老女は安堵した様子で吐息を洩らす。
「もっと早くにこうしていれば、ここまでこじれなかったものを…」
「過去を嘆いてもどうにもなりませんよ。それに俺も、ご期待には添えないかもしれない」
謙遜した物言いではあるが、その真意はどうにも読めない。
室内だと言うのに外す素振りも見せない、濃い色のサングラスにその表情は隠されているせいであろうか。
「我が身可愛さで助けを求めたのなら、手を貸すつもりはなかったが…そうじゃないなら話は別です」
その癖、こちらの心中を見透かしたかのようなことを言うので、空恐ろしくもある。
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