三、忍び寄る

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「…口に出しては、いけません。悟られてしまいますから」  能面のような佐久間の顔に、感情らしきものが浮かぶ。  緊張と、警戒。  そして、その声には焦りのようなものが感じられる。 「佐波様がおっしゃるには、この家は呪われているのだそうです。ずうっと昔から…」 「呪われている?」  それは、昨夜の巨大な蛇に、ということだろうか。  科学の進んだ現代において、なんとも非現実的な話ではあるが、今の皐月には納得するだけの材料があ。  己の見たことが未だに信じられないが、あのような 異形が現れるとなれば、その話には信憑性がある。 「詳しいことは、私の口からは申せません。と、いうよりも知らないのです。ただ、生前佐波様が後のことを頼まれた方がいらっしゃるので、その方ならご存知かと」 「その人は?」 「今日にでもいらっしゃるそうです。ですから、それまではこの部屋でお休みになられてください」  昨晩恐ろしい思いをしたばかりだというのに、この部屋に閉じ込められる。  そのことに皐月が嫌悪感を感じたのを察したのだろう。佐久間は「ご安心ください」と請け負う。 「廊下に控えていますので、何か起こった場合には私がお守りいたします」
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