一、知らせ

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一、知らせ

「何が楽しくて生きてるんだろう」  一人残された暗いオフィスで、皐月はポツリと呟いた。  モニターの明かりに浮かび上がる、乾燥して少し荒れた指先。  その左手の薬指に光る、小さな粒ダイヤが埋め込まれたシルバーのリング。  そんなに良質のダイヤではない。  言ってしまえばオモチャのようなものだが、まだ今ほどの年収ではなかった頃の彼が、「自分の精一杯」だと言って贈ってくれたもの。  いつか君より稼げるようになったら、結婚して下さい──そう言って照れくさそうに笑っていたのに、昨日久しぶりに会った時には冷めた目で「別れよう」だなんて。
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