三、忍び寄る

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「もしかして、私にもそれが?」  呪いの印と言えば、アザだろうか。自分の手足を見てみるが、幼少の頃より目立つアザなどはない。  それとも何か、別の形で現れるものだろうか。 「申し訳ありません。私にもそこまでは…。どういった印なのか、佐波様はお教えくださいませんでしたので。ただ、この地に呼ばれた以上、何らかの関わりがあるのでは…と」    沈黙が流れる。 (昨日から本当に、わけのわからないことばかり)  皐月はこめかみに手を当て、深く息を吐き出す。 「すみません。お食事がすっかり冷めてしまいましたね。温め直して参ります」  佐久間がそう言って膳を持って行こうとするのを、皐月は制する。 「そのままで大丈夫です。温かいうちに食べなかった私が悪いんだもの。それより、ここにいてください」  皐月の懇願に、佐久間は「わかりました」と頷く。  正直食欲もないし、砂を食んでいるようで味などしない。  もそもそと冷えた米を咀嚼する。
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