三、忍び寄る

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 この家へ来てから、様々なことが目まぐるしく起こって、皐月は混乱の中に立たされている。  だが、今佐久間と話をしたことで、少しだけ余裕を取り戻した。  ゆっくりと食事を続けながら、皐月は昨日からの出来事を頭の中で整理し始める。  金富の家には、『呪い』と呼ばれる言い伝えが残っている。 (どういう内容かまでは、わからない。佐久間も知らないのか、言いたくはないのか…)  でもきっと、昨夜現れた化け物に関わることだろう。  セツはアレのことを「カガチ様」と呼んでいた。顕現するとも。 (この家の人はアレを、神様のように崇めているということ? 呪いと認識しているのは、佐波や佐久間だけ?)  いいや、きっと違う。  この家の人々は呪いの事実を知っていて、畏れている。  そうでなくば、皐月に「家を継げ」と言っては来ない。  障りがあると誰かが言っていたではないか。  皐月が当主の座に就かなければ、自らに降りかかる類のものであると、正しく認識していることに他ならない。 (悪いことばかりではないのだわ、きっと。当主を犠牲にして、何かしらの恩恵を与える─アレはそういう存在なのではないかしら)  そう考えると、合点がいく。
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