三、忍び寄る

19/23
前へ
/84ページ
次へ
 しかしだ。解せないこともいくつかある。  まずは母・弥生がこの家から逃げたというのに、今まで何事もなかったのは何故なのか。  選ばれていない者が当主の座につくと、悪いことが起こると佐久間が言っていたではないか。  確か永田から聞いた話だと、佐波の死に不審な点はなかったそうだ。    風邪をこじらせた末、肺炎で亡くなった。    若い頃に大病を患った影響で体が弱かったために、重症化したのだそうだ。  七十を超えての身であれば、なんらおかしな点はないように思える。  そんな佐波が当主の座についてから今まで、何事もなく過ごせたのは、おかしいのではないか。 (何か抜け道がある─ということ?)  もしそれが事実だとすると、皐月も同様に『呪い』から逃げられる可能性が高い。 (母のことは見逃しておいて、私をこの家へ呼んだの? 矛盾しているわ) 数十年も経って、皐月をわざわざこの家へ呼んで、『呪い』を蒸し返すような真似をしなくとも良いというのに。 それだというのに、これから来るという人物に何らかの対処を頼んだというのか。 佐波の行動には一貫性がないように思える。
/84ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加