三、忍び寄る

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「はい。槙野です」 『おはようございます。永田です』 電話の向こうの永田は、疲れた声をしている。 「すみません、なんだか面倒なことになって…。少しは休まれましたか?」 『あはは…。大丈夫です。お気遣いありがとうございます。槙野さんこそ、慣れないところで休めなかったんじゃないですか?』 「そう、ですね。昨夜は本当にいろいろあって…」 どう説明したものかと皐月が口ごもっていると、永田はそれを察したのだろう。 『私のほうでもあれから調べまして…詳しくお話しさせていただきたいので、30分後くらいにお迎えに上がります。午後とお伝えしていたのにすみません。出てこられますか?』 金富家の面々の前では話しづらい内容なのだろう。 皐月も一度この家を出たかったので、その提案はありがたかった。 しかし──…。 「佐久間さん。永田さんと話をしたいので、少し出ても問題ないでしょうか」 通話マイクを手で覆った皐月は、ちょうど膳を下げお茶を持ってきた佐久間に尋ねる。 「あまり遅くならないようでしたら、大丈夫かと」 「わかりました。では、支度します」 佐久間へ頷き、電話の向こうの永田へ告げる。
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