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「はい。槙野です」
『おはようございます。永田です』
電話の向こうの永田は、疲れた声をしている。
「すみません、なんだか面倒なことになって…。少しは休まれましたか?」
『あはは…。大丈夫です。お気遣いありがとうございます。槙野さんこそ、慣れないところで休めなかったんじゃないですか?』
「そう、ですね。昨夜は本当にいろいろあって…」
どう説明したものかと皐月が口ごもっていると、永田はそれを察したのだろう。
『私のほうでもあれから調べまして…詳しくお話しさせていただきたいので、30分後くらいにお迎えに上がります。午後とお伝えしていたのにすみません。出てこられますか?』
金富家の面々の前では話しづらい内容なのだろう。
皐月も一度この家を出たかったので、その提案はありがたかった。
しかし──…。
「佐久間さん。永田さんと話をしたいので、少し出ても問題ないでしょうか」
通話マイクを手で覆った皐月は、ちょうど膳を下げお茶を持ってきた佐久間に尋ねる。
「あまり遅くならないようでしたら、大丈夫かと」
「わかりました。では、支度します」
佐久間へ頷き、電話の向こうの永田へ告げる。
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