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「近くまで来ているそうなんですが、事情があってここまで来られないそうです。槙野さんと一緒に、来てくれないか、という話なんですが…」
なんとも妙な話ではないか──皐月は険しい顔をする。
それならそうで、佐久間からの連絡を受けてそう告げれば良いものを。
(信用してもよいのだろうか)
なにせ佐波が呼んだ人物。
金富家のしきたりを守らせるための布石だとしたら、会うのは危険かもしれない。
だが──。
(もし本当に、『呪い』をなんとか出来ると言うなら…)
今はそれに賭けるしかないのも事実。
相手が何を考えているか知らないが、行ってやろうじゃないか。という思いで、皐月はため息混じりに答える。
「わかりました」
皐月の返答に永田は頷き、電話口の相手へ告げる。
「今から金富本家を出ます。…そうですね、30分後くらいかと」
待ち合わせ場所や時間にやり取りが終わったらしい。
永田は通話を終え、携帯電話を胸ポケットに仕舞う。
「駅前で待っているそうです。そろそろ向かいましょうか」
「ええ」
頷いた皐月を、助手席へ促す。
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