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「セツ様の目は私が誤魔化しておきます。お戻りの際は、また裏口からお願いいたします」
そう言って佐久間が見送ってくれた。
車は暫く走り、バックミラーに映った佐久間の姿は、小さくなってもう見えなくなった。
「…本当はこのまま、東京にお戻りいただくのが一番なんですが」
ハンドルを握る永田が、ぽつりと呟く。
「金富家は、この辺り一帯の有力者です。分家の中には政治家なんかもいて、そちらの伝手で他の動かれると面倒になりますから」
「わかっています。中途半端な状態で帰っても、却って長引かせるだけですから」
皐月の返答に、どこかホッとした表情を浮かべる永田。
「永田さんは、どういう人かご存知なんですか?」
「え? ああ、今から会う人ですね。実を言うと、会うのは初めてです。前任者である父は、佐波さんの代理で何度か顔を合わせていたようですが」
「どういう人なんです?」
「加賀美さんと仰る、関東で古美術商をされている方です。なんでも、”変わったこと”に詳しくてその道では有名なんだとか」
「つまり、オカルトめいたことに…?」
永田は言葉を濁したが、『呪い』のこともある。つまりはそういうことだろう、と皐月は納得した。
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