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「そうみたいです。古いものには何かが宿る──なんて言いますけど、信じられませんよね」
実際に見たこともないし、と永田は軽快に笑う。
少し前の皐月なら、今の永田の言葉に同調していただろう。
だが、昨夜見たもの。味わった感覚は、夢などではなかった。
えも言われぬ不気味さを思い出し、膝の上でぎゅっと拳を握る。
「知らないだけで、本当にあるのかも。…『呪い』、とか」
「…槙野さん?」
「しきたりなんて言葉で誤魔化しているけど、きっとそういう類のものなんだわ…」
「一体、何があったんです?」
ハンドルを握る永田の表情に、緊張感が走る。
「すみません。まだちょっと、混乱していて…なんと言ったらいいのか」
皐月は窓の外に視線を投じる。流れていくのは、のどかな田園風景。
ちらほらと建つ古い家屋は全て、小高い丘に建つ金富家に背を向けるように、窓や入り口の一切を金富家に面さない方角に設えている。
金富家の視線から逃れるように。
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