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車を走らせること30分。
待ち合わせの駅に到着したが、人影はほとんどない。
駅舎の前の日陰に、柄も悪く座り込んでいる男を除いては。
「…あの人ですかね」
車のエンジンを切った永田が、躊躇うのもわかる。
原色をふんだんに使ったド派手な柄シャツに、穴の空いたジーンズ。
明るい金髪に染められた髪は、生え際が少し黒くなり始めている。
色の濃いサングラスをかけて座り込んでいる姿は、どうみても真っ当な職についている大人とは思えない。
「槙野さんは待っていてください」
皐月が何か言うより早く、永田は車を降りて男の方へ駆けて行ってしまった。
助手席の窓から様子を見守っていると、永田と男が二言三言話した後、連れ立って車まで歩いてきた。
永田の表情は、どこか不安げである。
(無理もないわね。オカルトめいたことの専門家だって言うから、もっと『ぽい』のを想像してたでしょうし)
かく言う皐月も、勝手に年配の人だと思い込んでいた。
神社の宮司みたいな格好で、それらしい風体をしているものだという先入観が先走っていた。
そこへ来て、あの派手ななりでは、どことなく胡散臭く思えてしまうものだろう。
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