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ちょうど、今から十ヶ月前。
私がお客様相談室の室長補佐に昇進した頃だ。
今の会社に新卒で入社してから、何度か部署変更を経て今のお客様相談室に配属になった。
基本的にクレーム対応ばかりで、やりたい仕事ではない。けれど、他にやりたい仕事もないものだから、惰性で続けてきたようなものだ。
同時期に配属された同僚は辞め、新人も入れ替わり立ち代わり…いつしか一番の古株になっていた。
だからこその、室長補佐への昇進。他の社員のように泣き言を言ったり辞めたりしない私は、会社としては有り難いが、女だからと処遇に困っていたのだろう。
どうしたって、渉外対応の責任者は男性の方が適任である。女だと分かった瞬間、罵倒してくるような相手もいる。
そんな鬱々とする仕事も、彼と結婚すれば辞められるのかしら─。
漠然とそう考えていた。だから、昇進の話は一度断ろうと思っていた。けれど、上司の再三の説得に応じる形で、この話を受けたのだった。
「補佐だけど、一応役職を与えられることになったから、しばらく忙しくなるかも」
そう彼に告げた時、「おめでとう」と告げる彼の声が冷たくなったように感じたのは、今思うと気のせいではなかったのかもしれない。
二年という追いつけない差がある上に、女だてらに役職に就いた。この事実が、彼の何かを傷つけたのだろうか。
今となっては真偽を確かめることなど出来ないけれど。
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