12人が本棚に入れています
本棚に追加
/84ページ
二、蛇の家
ガタン、ガタンと田舎道特有の揺れを体で感じながら、流れる車窓の景色を眺めるでもなく見る。
(こんな風にのんびりと景色を眺めるのも、何年ぶりかな…)
深く濃い緑の山。鳥が気持ち良さそうに風に乗って空を飛んでいる。
大伯母が住んでいた土地は、山間の小さな集落だと言う。
東京からは新幹線、鈍行と電車を乗り継いで三時間強。それなりに遠い。
親族の法要や諸手続きで遠方へ行くためと説明し、月曜日の有給休暇を室長へ申請した。
すると、
「代休も残っていることだし、一週間くらい休みを取ったら? 槙野さん、夏休みも取っていないし」
と、半ば強制的に長めの休暇を得てしまった。
残業の多い皐月を休ませねばならないと、会社からお達しが来ていたのだろう。
その言葉にありがたく甘えることにした。
いろいろとありすぎて、正直疲れた。
問題のひとつはこれから解決へ向けて動いているところではあるが、ここらで一息つくのもいいだろう。
最初のコメントを投稿しよう!