1

2/5
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ
 翔ちゃん……。  優しかった、翔ちゃん……。  キラキラした笑顔でよくスキップをしていた翔ちゃん……。  時代遅れの流行歌が好きで、ところかまわず鼻歌を歌っていた翔ちゃん……。  中学三年生のとき、突然病気で死んでしまった翔ちゃん……。  大人になった私は疲れ果ててしまいました。  もう、あなたのところへいってもいいでしょうか?  リピートボタン  私はペン縦にしているマグカップからカッターナイフを手に取る。  ジリジリと刃を出した。  とても無機質な刃……。  空虚で、なんの力も込められていないような――。  でも、所詮人間の死なんかこんなもの。  あんなに輝いていて、生命そのものに思えた翔ちゃんでさえ、あっけなく死んでいったのだから。 「ふぅ」  私は小さくため息をついて、無機質な刃を手首にあてがう。  痛いのかな……。  怖いけど……。 「…………」  ……………………。  ……………。  ……。 「くぅ――」  力を込める。   刃が薄く肌にめり込む。  痛い。  うっすらと血が滲み出てきた。  このまま右手を引けば――。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!