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翔ちゃん……。
優しかった、翔ちゃん……。
キラキラした笑顔でよくスキップをしていた翔ちゃん……。
時代遅れの流行歌が好きで、ところかまわず鼻歌を歌っていた翔ちゃん……。
中学三年生のとき、突然病気で死んでしまった翔ちゃん……。
大人になった私は疲れ果ててしまいました。
もう、あなたのところへいってもいいでしょうか?
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私はペン縦にしているマグカップからカッターナイフを手に取る。
ジリジリと刃を出した。
とても無機質な刃……。
空虚で、なんの力も込められていないような――。
でも、所詮人間の死なんかこんなもの。
あんなに輝いていて、生命そのものに思えた翔ちゃんでさえ、あっけなく死んでいったのだから。
「ふぅ」
私は小さくため息をついて、無機質な刃を手首にあてがう。
痛いのかな……。
怖いけど……。
「…………」
……………………。
……………。
……。
「くぅ――」
力を込める。
刃が薄く肌にめり込む。
痛い。
うっすらと血が滲み出てきた。
このまま右手を引けば――。
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