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「バカッ!!」
「えっ!?」
突然聞こえてきた怒鳴り声。
誰もいないはずの部屋なのに。
振り返ると、
「うそ……」
翔ちゃんが立ってた。
「なんで……?」
「お前がバカなことしようとするからだろ!」
翔ちゃんは怒ってる。
でも、私がとっくに失ってしまったものをしっかりと携えて立ってる。
キラキラとした瞳で――生命そのものと思えた輝きで――私を見てる。
「そんな……だけど、死んじゃって――」
「ああ、俺は死んだよ。でも、死んでからもずっとお前のこと見守ってたんだ」
翔ちゃんはそっぽを向いて口を尖らせる。
照れくさがってるときの翔ちゃんの癖。
あの時のまま。
「夢の中だけど、お前の愚痴とかけっこう聞いてやってたりするんだぜ。憶えてないのか?」
「憶えて……ない……」
「まぁ、いいけどさ。それは。ともかく、悪いことはいわん! 自殺なんかやめとけ」
「…………」
私は俯く。
死んでる翔ちゃんのほうが生命で、生きてる私のほうが死みたいだ。
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