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「おっ、氷咲くん。 ごめんね、急に呼んだりして。 忙しかったかな?」 「いや、暇っすよ 全然」 昨日は 映画観て、父さんと酒飲んで 今日も実家で ゴロゴロしていると、仕事の電話で呼び出された。 ビルの 一階にある小さな店にいる。 ここは... 良く言えば、古物店とか アンティークショップだけど リサイクルショップに毛が生えた感じだな。 すげぇ値段の掛け軸とかはないけど そこそこな値段の絵とか食器はある。 オレは当然、価値の目利きは出来ないけど 違う目利きのために、時々呼ばれる。 「いやぁ、通販で買い取り始めたら がばっと物が増えちゃってねぇ... バイトの子が、絵か喋るって言うんだよね」 「えっ、すごいっすね。どの絵?」 オーナーのおっさんが指したのは 印象派の画家の絵の、よく出来た贋作だった。 日傘をさす白いドレスの貴婦人を、見上げる位置から描いてるやつ。 その絵の前に立って、意識を向けた。 ... 何もないと思うけどなぁ。 「なんかねぇ、三上さん... あ、バイトの子ね。 その子が言うにはさ その絵から “こっちだ こっちだ” って 聞こえた なんて言うもんだから、気味悪くてねぇ」 「うん、それは気持ち悪いっすね。 男の声で? 女の声?」 「あっ、聞いてなかったわ。 三上さんに電話してみようかな」 おっさんが店の電話に手を伸ばした時に、その声は聞こえた。
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