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『こっちだ こっちだ』 子供の声だ。 ただし、絵ではなく 背後からだった。 「氷咲くん」 「聞こえましたね。探してみます」 おっさんは ビビりながらも、気持ちワクワクしてるように見える。 この人絶対、UMAとかも好きだな。 振り向いて背後を見ると、そこには 細工硝子のグラスが並んだ棚があった。 この中の ひとつかな? 移動するようなやつなら、また違うとこに行ってしまったかもだけど。 グラスの ひとつひとつをチェックする。 もう 一回喋らねーかな? 子供の声って幼いと、男の子か女の子か わかりづらいよなー。 あっ、いた いたけど、そいつは特に害があるヤツじゃない。 物の精、付喪神(つくものかみ)って言われるヤツだ。 今は赤いグラスの中で シャボン玉みたいな形で入っている。 グラスに指を入れて触ってみると そいつは、一輪挿しの花瓶の付喪神だということがわかった。 「店に、硝子の 一輪挿しとかあります?」 おっさんに聞くと「あれかな?」と、棚の下の段の隅を指差した。 その 一輪挿しを手に取り、赤いグラスの中の付喪神を、元のそれに戻した。 こいつ、本体離れて 何やってたんだろ? 絵やグラスを もう 一度チェックするけど そこには やっぱり何もない。 一輪挿しを持ったまま 狭い店内をうろつく。 しばらくは 何の反応もなかったけど 店のレジの下に置いてあった段ボール箱に近づくと、一輪挿しは 手の中で震えた。
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