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うーん... 仕事の後、よく思う。 中途半端なんだよな、なんか。 目利きは出来ても、さっきみたいに オレには対処出来ないもんもあるし。 霊とかの場合だと、普通のやつなら話聞いてやって、説得でなんとか出来ることもある。 けど、憎悪してるのが常態のヤツは オレには無理だ。 こっちが話したって何も聞きゃしないし そいつも語ったりしない。 口に出すのは おどろおどろしい怨念の言葉だけで 会話が成立しない。 もう元の人物より、憎悪の感情の方が本体なんだよな。 下手したら、本体はスッキリと成仏してて 念だけが残ってたりする。 とは言え、そういうのに当たる度に こうやって断り続けるのもなぁ... ちょっと コーヒーでも飲もうかと カフェにバイク停めて、店内に入る。 エスプレッソをダブルで注文して、奥の方のテーブルについた。 コーヒーは、実家のやつに慣れていて どこで飲んでも 少し薄い気がする。 うちでは、直火でコーヒーを淹れる。 母さんがイタリアから持ってきたアルミとかステンレスのコーヒーポットで。 濃さは、エスプレッソより薄く、普通のコーヒーよりは濃い。 豆にモカを使っていなくても、モカコーヒーと呼ばれるらしい。 まあオレが、そういうコーヒー出してくれる店を探しきれてないだけ なんだろうけど。 テーブルに置かれたカップのエスプレッソ飲みながら、窓に眼を向けると 道の向こうの河原沿いの桜の花びらが 風に舞うのが見えた。 いいよな、春って。 河原にはタンポポもたくさん咲いているようで、柔らかい草色の中に、明るい黄色の花がたくさん見える。 これ飲んでカフェ出たら、河原に寄ろかな... とか 考えてたら、スマホが鳴った。 知らない番号からだけど、仕事用にとったセカンドナンバーにかかってきたし、そういう電話だな。 電話に出て話を聞いてみると 中学生の息子の様子がおかしい、という 母親からの、疲れた声の相談だった。 「すぐ伺っても 大丈夫ですか?」 住所を聞いて、エスプレッソを飲み干すと そこへ向かった。
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