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電話で聞いた住所のマンションに到着し、依頼された部屋のインターフォンを押す。 ほどなくして、やつれた女の人が顔を出した。 電話の母親だな。 「はじめまして。 先程連絡をいただいた、氷咲です」 「あ、はぁ... 」 うん。明らかに、こいつで大丈夫か?って顔だ。 若い兄ちゃんがジーパンで来たら そら そうなるよな。 でもオレ、慣れてるしね。 「僕に無理だったら 料金はいただきません。 息子さんは どういったご様子ですか? 会わせていただくことは可能でしょうか?」 「あ、はい。息子は自室に... 」 母親が まだオレを疑いつつも、詳しく状況を説明しようとした時に 奥の部屋から、けたたましい笑い声がした。 『やめないか!』という、別の声。 続けて、ドアを破らんばかりの殴音が響く。 母親は ビクッとして震え 「病院にも入院していたんですけど... 」と 目に涙を浮かべる。 息子が立てる騒音に 隣の家のドアが開いたので、 オレは 家の中へ通された。
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