2/6
前へ
/171ページ
次へ
息子の部屋には、外側から鍵がかけられている。 簡単に話を聞くと、様子がおかしくなったのは 一ヵ月くらい前。 夕飯の時間に自室から出てくると ダイニングで失禁し、弾けたように笑い出した。 テーブルに飛び乗って、手掴みで飯を食う。 唖然としていた父親が我に返り、取り押さえるようとすると、ベランダから跳んで逃げた。 3階から跳んで普通に着地して走ったらしい。 警察に連絡して 息子は無事に確保。 そのまま病院へ。 錯乱状態だったので、すぐ入院になったが 三日前に ようやく落ち着いて退院した。 「良くなったと、思ってたんです... 」 まだ学校は休んでいたが 昨日まで、家では普通に過ごしていた。 今日の昼。 昼食を作ろうとした母親がキッチンに向かうと、冷蔵庫のドアを開けられていて、息子がその前に座っていた。 食材が床に散らばっている中で、生の魚の切り身を手掴みで食べていたらしい。 母親が名前を呼んで取り押さえると、逆に押し倒され、スカートに手を入れてきた。 堪らず、やめなさい! と 平手打ちすると ポロポロと涙を流したが、また大笑いし出す。 会社に出ていた父親に連絡すると、すぐに帰って来て、息子と 一緒に息子の部屋に入り 母親に外から鍵を付けさせたようだ。 「じゃあ 今、お父様は息子さんと部屋に?」 「はい。息子がベランダから出ないように、と... 」 母親は、オレに説明している間に泣き出してしまった。ひどく くたびれた様子をしている。 オレは息子の部屋へ向かい、まだ殴音が響くドアをノックした。 「ドア 開けますよ、いいですか?」 息子の けたたましい笑い声に混じり 「えっ? 君は?」という 動揺した父親の声が、返事を返してくる。 「あなた、ごめんなさい。 専門の人に、相談したの」 オレの代わりに答えた母親の声に、父親は 「そうか... 」と、答え 「どうぞ、開けてください」と 疲れた声で オレに言った。
/171ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1061人が本棚に入れています
本棚に追加