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大学では、とりあえずアフロに跳び蹴りし 翌週、ホテルで聞いた話では ヒポナは あのホテルのオーナーだっていう。 「回りくどいことしてないで すぐ出て来いよ」と 言うと 「あの時は違う場所にいた」とかなんとか。 まあ、いいけどさぁ... で、自然の声を聞くとかいうのが ほとんど瞑想だったんだよな。 何かが語りかけてくるはずだ とかってさ。 座って寝てたから 一向に来ねぇし。 でも、四週目くらいで寝てても来た。 コヨーテだった。 煙が作るシルバーグレーの毛皮のコヨーテは オオカミに似た顔で、狐のような太いしっぽを揺らし、オレの周りをくるくると何周も歩き回る。 そして、何も語ることはなく消えた。 ヒポナは、コヨーテのことを 「トリックスターだ」と言う。 「それって、トラブルメイカーだよな? いたずら好きで、騙したり 話を引っ掻き回したりするやつ」 「だが、トラブルの後 最終的には良い方向へ落ち着くことが多い。 愚者は賢者でもある」 ヒポナは オレのバングルを指差す。 バングルの模様のひとつ 狼と思っていたのは、コヨーテらしい。 この週以降も最後まで、オレの前にはコヨーテしか来なかった。 ただ、周囲を歩き回って消えるだけ。
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