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「お髪や肌色に映えるとか、お花に例えるとか、褒め方にもいろいろありますよ。折に触れ、あれこれお教えしてきたと思ったんですけどねぇ」
二人の応酬を見守っていたセラは、微笑を浮かべる。
ロットの存在も、今ではすっかりこの国に馴染んだようだ。
来月に迫った婚礼も、そのことを象徴しているようで喜ばしく思う。
そうそう、とポンと手を打つリネット。
「ロット様の衣装も出来上がっておりますよ。お袖を通されみてはいかがですか?」
「いや、俺は…」
龍の青年は、気乗りしない様子である。
あまり窮屈な格好を好まないことは良く知っている。
今着ている服だって、イムスタリアの庶民が着る袖のない上衣と、裾がすぼまったゆったりとしたズボン。
装飾の施された服は嫌いだと言い、一度も袖を通したことはない。
セラのドレスが大陸風のものということは、ロットの衣装も同じ作りになっているのは間違いない。
大陸風の衣装は、どれもしっかりした生地を使い、体の寸法に合わせて裁断、縫製されている。
ロットからしてみれば、窮屈この上ない服だ。着るのは嫌がるだろうと想像していた。
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