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「揃いで誂えたのですから、着ていただかないと衣装が泣きますわ」
リネットが言うと、二の句を継いで
「そうよ。私だけ着飾ってみんなの前に出るなんて、おかしいじゃない」
とセラも言った。
女二人に言いくるめられれば、逆らえるはずもなかった。
ロットはセラに手を引かれて、渋々といった様子で室内へ入る。
イムスタリア最大の慶事である、セラと龍の青年・ロットとの婚礼は、もう来月に迫っている。
期待に胸踊らせているのは、何もリネットだけではない。
国民のすべてが、その熱に浮かされている。
セラが生まれて十六年。
そして、ロットがこの国にやってきて十年。
その日を、今か今かと待ち望んでいたのだから、無理もないことだ。
当事者であるセラからしてみると、人々の期待や喜びの声は、どこかくすぐったくもあり、若干の居心地の悪さを覚えもする。
しかし、それで彼らが喜んでくれるのであれば、衣装の窮屈さなど我慢しよう──そう思い、いまだ渋るロットに衣装を差し出すのであった。
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