一章 黄金姫

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 いずれの時代にも穏健派や革新派など、さまざまな思想を持つ島主が存在したが、王国の(おこ)りより三百年。  大きな争いもなく、うまく成り立ってきた。  そのバランスが崩れそうになったのも、伝説の再来と時期を同じくした。  炭鉱の島、イネス。  その島の主人である貴族の長・モリスに、二人目の娘が生まれた。  セラだ。  彼女が光り輝く石を持って生まれたことにより、十二貴族たちは危うく分裂しかけた。  それと言うのも、鉄とわずかばかりの宝石が出る鉱脈から、まるで湧き出るように金が採れるようになったからである。  イネスの人々は喜び、他の島の人々は不安を抱いた。  島の財産は島に帰属する。そういう取り決めであったからだ。  それぞれの島の経済状況は異なる。有する資源も異なれば、人の数も違う。  それぞれが平等であるようにとの考えのもと、財源の何割を国に納めるかはあらかじめ定められている。  収益が良くない年は前年よりも低く、逆に良い年には高く納める。  これも十二貴族たちが決めたことだった。  だが、金の存在はその制度を根底から覆すことになりかねない。
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