一章 黄金姫

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 金はイネスに湧いた資源だ。国がその全てを取り上げることは出来ない。  湧き出た金によって得た富の何割を納めるかは、古くからの取り決め通りに決められる。  しかし、金そのものの扱いをどうするかは、イネスで決める。  他国との貿易に使っても、ただただ溜め込むだけでも良い。  イネスの金は、イネスの財産(もの)。  その恩恵に預かれるのは、イネスだけだ。  そのことを決めたのは貴族たちで、国民もそれに納得はしている。  だが、これまで以上の富を約束してくれる存在(きん)に、目が眩む者も多かった。    何せ、どこを掘っても湯水のごとく金が出るのだから。    イネスの長、モリスは悩んでいた。  ──このままでは、イムスタリアが分裂することは避けられない。  その要因となり得るのが、突如として湧いた金。  前日までは今まで通りに鉄が採れた鉱脈も、何故だか不思議と金が出る。  どこを掘ってもそんな状態だ。  鉱山そのものが、そっくり金に変わってしまったようだと首を傾げるしかない。  最初こそ驚き、歓喜したものだが、今となっては得体の知れない恐ろしささえ感じる。 「何故なのか…」  考え、はたと気づく。
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