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金はイネスに湧いた資源だ。国がその全てを取り上げることは出来ない。
湧き出た金によって得た富の何割を納めるかは、古くからの取り決め通りに決められる。
しかし、金そのものの扱いをどうするかは、イネスで決める。
他国との貿易に使っても、ただただ溜め込むだけでも良い。
イネスの金は、イネスの財産。
その恩恵に預かれるのは、イネスだけだ。
そのことを決めたのは貴族たちで、国民もそれに納得はしている。
だが、これまで以上の富を約束してくれる存在に、目が眩む者も多かった。
何せ、どこを掘っても湯水のごとく金が出るのだから。
イネスの長、モリスは悩んでいた。
──このままでは、イムスタリアが分裂することは避けられない。
その要因となり得るのが、突如として湧いた金。
前日までは今まで通りに鉄が採れた鉱脈も、何故だか不思議と金が出る。
どこを掘ってもそんな状態だ。
鉱山そのものが、そっくり金に変わってしまったようだと首を傾げるしかない。
最初こそ驚き、歓喜したものだが、今となっては得体の知れない恐ろしささえ感じる。
「何故なのか…」
考え、はたと気づく。
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