一章 黄金姫

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 金の処遇をどうすべきか、判断を下すには情報が足りない。  資源も乏しく、他国に誇るような技術や品もないイムスタリア。  大国と国交を築くには、あまりに弱い国力。  自国を守るため、必要最低限、近隣諸国のみに留めて築いて来た国交が、思わぬところで裏目に出た。  突然降って湧いた金を、果たして使っても良いものなのか。  生まれたばかりの娘との関連性は?  もしも古い伝説の通りなのだとしたら、過ぎたる富に溺れた国はいずれ滅びの道を辿るのではないか?  モリスの頭の中で、答えの出ない問題がめまぐるしく浮かんでは消える。  それにもし、湯水のごとく湧く金の噂が他国に漏れでもしたら、大国は競うようにこの国を攻めるだろう。  複雑な海流に阻まれているとはいえ、技術に優れた国の船であれば、やすやすと上陸を許すことは目に見えている。  イネスの島民たちは、その事実に気付いていないようだ。  湧いた金に浮き足立っている。  眼前に迫る危機に、策を講じなければならないことを、モリスは悟った。 「十二貴族を招集しよう」  モリスは急ぎ、緊急の会議を申し出ることにした。  決めるが早いか、自分の他の11人に対してその日のうちに使者を送った。
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