3人が本棚に入れています
本棚に追加
金の処遇をどうすべきか、判断を下すには情報が足りない。
資源も乏しく、他国に誇るような技術や品もないイムスタリア。
大国と国交を築くには、あまりに弱い国力。
自国を守るため、必要最低限、近隣諸国のみに留めて築いて来た国交が、思わぬところで裏目に出た。
突然降って湧いた金を、果たして使っても良いものなのか。
生まれたばかりの娘との関連性は?
もしも古い伝説の通りなのだとしたら、過ぎたる富に溺れた国はいずれ滅びの道を辿るのではないか?
モリスの頭の中で、答えの出ない問題がめまぐるしく浮かんでは消える。
それにもし、湯水のごとく湧く金の噂が他国に漏れでもしたら、大国は競うようにこの国を攻めるだろう。
複雑な海流に阻まれているとはいえ、技術に優れた国の船であれば、やすやすと上陸を許すことは目に見えている。
イネスの島民たちは、その事実に気付いていないようだ。
湧いた金に浮き足立っている。
眼前に迫る危機に、策を講じなければならないことを、モリスは悟った。
「十二貴族を招集しよう」
モリスは急ぎ、緊急の会議を申し出ることにした。
決めるが早いか、自分の他の11人に対してその日のうちに使者を送った。
最初のコメントを投稿しよう!