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店の中では壮士は梓に品出しを頼まれていた。
先ほど売れた商品の場所に別の雑貨を置くのだ。梓からはお任せすると言われている。
店の奥には立ち入り禁止の紙が貼られた扉がある。壮士はここに入るのは初めてだった。
「失礼します。」
と壮士は小声で言いながら扉を開け、中に入った。
「わ・・・すご。」それが壮士の第一声だった。
中は意外に広く、いくつもの棚があって、そこに綺麗に雑貨が並べられている。
壮士は、十分近く悩んだ末、和風なカエルの置物と、クリスマスのオーナメントを数個手に取った。
それよりこの高いところに置いてある雑貨はどうやって取っているんだろうかと壮士は疑問に思っていた。
梓と会うのは五回目になるが、壮士は梓の足が動いていたり、立ち上がったりしているのを一度も見たことが無かった。
壮士は梓に、何度か障害のことを訪ねようと思ったことはあったのだが、なかなかそのタイミングが掴めずにいたのだ。
しかし、そんな壮士でも、梓を見ているうちに、彼女の障害が重いものであるということは何となく感じていた。
「梓さん。お待たせしました。」
壮士は先ほど選んだ雑貨を持って店内に戻って来ていた。
「どれどれ。クリスマスオーナメントとカエルか。どうしてこのカエルにしたの?」
「どうしてって・・・一番目を引かれたからですかね。」
「そうなんだ。私もこれ結構好きなの。知り合いが作ってるんだよ。ほら、あそこにもカエル置いてあるでしょ。」
梓の目線の先には、壮士が選んだカエルと同じ顔をしたカエルがピアノを弾いている置物があった。
「いいですね、コレ。うん、すごく良い。」
梓は作品をまじまじと見つめる壮士の横顔を見ながら、「あなた意外と見る目あるんだね。」と言ったのだった。
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