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午後からの授業を投げ出した彼はS駅の改札口で彼女を待っていた。
この駅がいつもの待ち合わせ場所なのだ。
彼の大学からも彼女の高校からも同じ距離の場所にあるS駅は、若者の中心地と呼ばれる場所で遊び場としてもちょうど良かったのだ。
五分ほどしてから制服に身を包んだ黒髪でポニーテールをした少女が壮士の肩を叩いてこう言った。
「お待たせしました。待ちましたか?」
「お疲れ。全然待ってないから大丈夫だよ。今日はどこ行く?」
彼女はポケットから携帯を取り出し、一枚の写真を壮士に見せた。
「このアイスクリームが食べたいです。」
それはソフトクリームにウサギのクッキーやらハートのキャンディやらがトッピングされた、とても可愛らしいものだった。
「美味しそうだね。行こうか!」
「はい!」
壮士は甘いものが苦手だったが、可愛らしい年下の彼女ために我慢するのだった。
と言ってもこの二人、実はまだ三回目のデートである。
彼女の高校は壮士の母校であり、最近行われた文化祭で二人は出会ったのだ。
壮士は軽音部のOBとして学校に呼ばれていて、その時の演奏を講堂で彼女が見ていた。
演奏が終わったあと壮士は、友人たちと一緒に座って話をしていた彼女に声を掛けた。
大人しそうで恋愛経験の少なそうな彼女に。
壮士は二か月付き合った彼女と別れたばかりで、とにかく誰でもいいから彼女が欲しかったのだ。
それから二人は一緒に出し物を回り、親しくなった。
次に会う約束をして、一回目のデートで壮士から告白し、付き合うことになったのだ。
壮士の思った通り、彼女は今まで男性と付き合ったことが全く無かった。
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