アングレカムの季節に

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「こんな時間に何しているの?明日も学校でしょ?」 「はい・・・。」 そして、その女性は今度は壮士の方を見た。睨み付けているようにも見える。 「あなた高校生じゃないよね。大学生?」 壮士は目の前の木の傍に置いてあった自分の鞄に手を置いたが遅かった。 車椅子の女性はその鞄をひょいと持ち上げ、持ち手の部分に付けられていたカードケースを覗き込んだ。 見えるところに学生証が入れてある。 それを見た彼女は、 「T大学の高坂壮士くんね・・・。うん、覚えた。吉野さん彼と付き合ってるの?」 「はい。まだ付き合って一週間ですけど。」 「一週間!?吉野さん、本当にあなたのことが大事ならこんな早く手出さないと思うよ。 余計なお世話かもしれないけど、この人とは別れた方がいい。吉野さんのためだよ。」 「言われてみればそうかもしれません・・・。私、焦っていたのかも。ごめんなさい。高坂さん。少しの間だったけど、有り難うございました。」 彼女は乱れた服装を直しながら立ち上がった。壮士はというと、ただ呆然としているだけだった。
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