幸福を告げる

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 それから少しして店に居た客が全員出ていくのを確認し、壮士は静かに店へと入った。梓はすぐに気が付いて、急いで車椅子を漕いで壮士の元にやってくる。 「どうしたの?急に居なくなっちゃって。すごい心配したんだよ。」 「ごめんなさい。梓さん。辛いことがあって、感情に流されるまま並木道の方まで走って行ってしまいました。」 壮士はその場に崩れ、そのまま梓の膝の上にうなだれた。 自分でも驚くくらい大胆な行動をしていることに壮士は気付くが、今さら止めることもできない。 「ちょ、ちょっと高坂くん?」 「梓さん、少しの間こうしていてもいいですか?落ち着くんです・・・。」 「はぁ。しょうがないね。お客さんが来たらすぐにどいてよ。」 壮士は嬉しかった。自分の我が儘を聞いてくれたからだ。旦那さんが居るのに。 (梓さんの良い匂いがする。それから暖かくて今にも眠りたい気分だ。) と壮士は目を閉じた。すると、頭の上を優しく撫でられるような感覚がして、壮士はますます眠くなっていく。 梓さんが自分の頭を撫でているのだろうか、いやそんなはずはないと壮士は頭の中で首を振る。 幸せな夢を見ているんだ、と壮士はそう思うのだった。
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