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「さっき元之さんに会った?」
壮士が聞きたくなかった名前だ。
「あ、会いましたけど・・・。梓さんって結婚されてたんですね。驚きましたよ。」
「言わなきゃとは思っていたんだけどね。」
「梓さんっていつ結婚したんですか?旦那さんとは今も仲良いんですか?」
「高坂くんどうしたの?顔が怖いよ。」
「あ、すみません・・・。」
「旦那さんとはもう四年になるかな。仲はぼちぼちね。」
「旦那さんのこと・・・愛していますか?」
壮士は真剣な顔でそう聞いた。
「えー。恥ずかしいな。何でそんなこと聞くの?」
「気になるんです。もしかして愛してないんですか?」
「愛してるに決まってるよ。私はね。元之さんはわからないけど・・・。」
梓は壮士から視線を反らしてそう言った。切なそうな表情だ。
「はーい。この話はもうお終い。恥ずかしいからもう聞かないでよね。」
そう言って梓は車椅子を漕いで奥の部屋へ行ってしまった。
少し聞きすぎてしまったかもしれない、と壮士は思ったが、あの梓の切ない表情が気になった。もしかして旦那と何かあるんじゃないか、と勘付いた壮士だったが、それ以上梓に何か聞きだすと言うことはなかった。
彼女に嫌われてしまったら元も子もない。
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