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梓は並べてある写真をもう一度見た。
写っている自分の顔が全て幸せそうな笑顔をしていて、何だか辛かった。
いつの間にか真実(ほんとう)の自分は壮士と居るときだけしか現れなくなっているようで。
(彼に会えなくなるのは怖い。彼から離れればまた元の日々に戻るに決まっている。それは嫌だけど、彼はこの件に全く関係ないのだ。早いうちにお別れしないと、もっと酷いことになるだろう・・・。)
梓は壮士に別れを告げることを決心するのだった。
「仕事が終わったら壮士に電話」と日付を書いた付箋を自分のパソコンに貼ると、梓は気持ちを切り替えて仕事を再開した。
梓はいつも通り帰る支度をしていた。いつもと変わらない夜だ。
ただ今日は、元之は家に帰って来ない。先ほど電話があったのだ。
梓にとってこういう日は珍しくなかった。
いつもならスーパーで晩御飯を買って帰るのだが、元之が帰らないならそんな必要は無さそうだ。有るもので軽く済ませようとそう決めていた。
それから、と梓はパソコンに貼ってある付箋の文字を眺めた。
先ほどから何度も壮士に電話を掛けようとしているのだが、手が震えてなかなか上手くいかない。
そうだ、と梓は何かを思いつくと、戸締りをして外へと出る。
寒空の下、車椅子を漕いである場所へと向かって行った。
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