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コンビニの中に入ると、左手のイートインスペースに見慣れた車椅子姿があった。
壮士は安心すると、梓の目の前の席に座った。
「梓さん。こんな所で何してるんですか。」
「あ。高坂くん。来てくれたんだね。ありがとう。」
梓はいきなりテーブルに乗せた壮士の両手を自分の手で包み込む。
壮士はいけない、とするりとその手を外す。
テーブルの上には案の定、買ったばかりであろうお酒が何本か並んでいる。
「これ全部飲む気ですか?ダメですからね。身体に悪いです。」
「飲みたい気分なんだもん。」
どうやら梓はお酒を飲むと人が変わってしまう性格のようだ、と壮士は思う。
今目の前に居る梓は頬がほんのり赤く、目もトロンとしていて、壮士の知らない彼女の姿だった。
(好きな人がこんな姿をしていたら、大体の男は放って置かないだろう。自分もそうだ。本当は触れたいが・・・彼女は既婚者。許されない。こんなにお酒を飲んで酔っているということは、きっと何かあったはず。話を聞いてあげないと。)
壮士はそうやって自分に言い聞かせた。
「梓さん。何かあるなら聞きますよ。ここでもいいですけど、他の方に迷惑になりそうなのでどこかに移動しませんか?」
「高坂くんの家がいいな。」
「家はまずいですよ。結婚している人を家に連れ込んだりできません。」
「心配しないで。今日は元之さん家に帰って来ないし、私、高坂くんを襲う気なんてないから。私だってたまにはぱあっとやりたいの。」
「はあ・・・。」
そうだ、自分たちは疚しいことなど何もない。
ただの先輩と後輩の関係なのだ、と壮士は心に言い聞かせることにした。
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