そして破滅へ

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 二人は温かい炬燵の中に入る。 座椅子があるので、梓はちょうど良い風にバランスが取れて座ることができた。 テーブルの上には先ほど買ったおでんを広げた。 まだ湯気が立っていて美味しそうだ。 「いただきます。大根美味しいよね。」 「俺、大根苦手なんです。梓さんに全部あげますよ。」 「あら、そうなんだ。じゃ遠慮なく。」 二人はお腹が空いていたのか、器に入ったおでんはあっという間になくなった。 「ふう。美味しかった。」 「ですね。美味しいもの食べたら元気出ましたか。梓さん。」 「うん、とっても。君の家に来て良かった。」 梓は笑顔でそう言った。しかし、その後、 「家に帰りたくない・・・。」 梓はポツリとそう小さな声で呟いた。 「どうしてですか?」 「家に帰ったらまたいつもの生活に元通り。仕方ないけれど、たまに嫌になるの。」 「優しそうな旦那さんが居るじゃないですか。」 「そうね。でも夫婦には色々あるのよ・・・。」 梓の切なそうな顔を見て、壮士は抱きしめたくなる衝動に駆られたが何とか我慢する。 そして、 「そういえば気になっていたんですけど、旦那さんとはどこで出会ったんですか?」 と前から気になっていたことを壮士は尋ねた。
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