そして破滅へ

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「彼の職場で私は事務職をやってたんだ。そこで彼に一目惚れをしたって言われて、何度かデートして、気づいたらプロポーズされてた。あの時は幸せだったな。」 と梓は話す。壮士は夫である元之がうらやましいと思った。 「私はあの頃の彼が好きだった。今はもう疲れちゃったかも。あはは。」 「梓さん・・・。」 これ以上聞いてしまって、自分が我慢の限界になる前に梓を家に帰そうと壮士は思い、立ち上がろうとすると、 「ねぇ。こっち来て。」 梓に腕を掴まれ、そのままバランスを崩し彼女の体にもたれかかってしまった。 「すみません。」 「謝らないで。」 二人の顔の距離は近い。見つめ合う形になってしまった。先に動いたのは梓の方だった。壮士は突然すぎて何が何だかわからない。 この状況は彼女にキスされているのだろうか。 壮士はそれに気づき、慌てて体を離した。 「あの時からずっとキスしたかったんだよ。ふあ・・・。眠たい。少し寝かせてね。」 壮士が何か言おうとする前に、梓はそのまま眠ってしまった。 しかも壮士の膝の上で。壮士は心臓をバクバクさせたまま、そっと自分の体から梓の頭を離す。 (いきなりはまずいでしょう・・・。でも、梓さん・・・好きです。) 壮士は心の中でそう呟く。我慢したのだから少しくらいいいだろう、と壮士は炬燵に潜り込み、梓の隣に移動した。 一応、と壮士は二時間後にアラームを掛ける。 そして眠っている梓と向き合った。 「お休みなさい。」と壮士は呟くと、額にチュッと口づけをした。 壮士は幸せな気持ちに包まれながら、そのまま眠っていくのだった。
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