アングレカムの季節に

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店には二人の女性客が居る。店の常連客である。 今日も小さな置物を買い、一人はプレゼント用のため梓が包み終えるのを待っていた。 「梓さん。あの彼どこで見つけて来たんですか?」 おんぶ紐で赤ん坊を抱っこしている主婦らしき女性は外を見ながらそう言った。 「高坂くんですか。知り合いの知り合いでして。学生で暇そうにしていたものだからクリスマスシーズンだけ働いてよって私が頼んだんです。」 「へぇ。彼、この町では結構噂になってるんですよ。ねぇ?」 すると隣の女性は頷きながら、 「カッコいいからね。それに店の前を通ったら必ず挨拶してくれるって。Rさんなんてこの前、お綺麗ですねって言われて赤面してたのよ。この町の主婦は皆放っておかないですよ。」 と笑いながら言った。梓は心の中で「あのナンパ男。」と呟いた。 それでも梓は笑顔を繕いながら、 「それは良かったです。あとで彼に伝えておきますね。きっと喜びますよ。」 と言うのだった。
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