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「ほら、危ないからこっち来な」
そう言って、悠馬は片手をポッケから出すと私の頭を鷲掴みにして車道側から歩道の奥へと移動させる。
「頭掴むな!」
見慣れた大きな手は私の頭をガッチリと掴んでて、UFOキャッチャーの人形よろしくされるがままに安全地帯へと導かれる。
わずかな抗議も、悠馬には全然効いていない。
むしろ楽しそうに笑って、掴んでいた頭をグリグリと撫で回し始める。
「あーもう!なんなの!」
ぐちゃぐちゃにされた頭を撫でつけながら文句を言うと、悠馬はようやく手を離してまたポッケに手を入れ、そして何がそんなにおかしいのか空を見上げて大口開けて笑った。
「やっぱり、今日は特別な日だな」
再びそう言う悠馬を、私は少しだけ見上げる。
「なんで?」
そう聞いたら、悠馬はゆっくりと足を止めて私を見下ろす。
そして、そっと顔を覗き込んで来たかと思うと、唇が重なる。
「美菜がいるから」
そう言って、至近距離で笑ったから、私はまたうつむいて。
「いつもじゃん」
やっぱり、可愛くないことを言った。
fin
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