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「小惑星帯に近づくのは危険です。これはレース妨害ではなく、人道的立場からの警告です」
画面に美人レポーターのマリラの顔が映った。
「ハングリースパイダー号から救難信号が出てるんだ。僕らは救助に向かうんだよ」と大地が言うと、
「なんですって?…でも、いいえ、これは特ダネだわ。絶対放送しなくちゃ。…私たちもついていきます」とマリラが言った。
「冗談じゃない。レッドアロー号は高速操縦に耐える構造には出来ていないんだろう?下手をすれば君たちの方が危ないかもしれないんだぞ。これ以上犠牲者を出したくない」
滅多に怒らないアルフレッドが怒って言った。
レッドアロー号内では乗員たちが言い争いを始めた。どうやら他の乗組員たちはマリラを止めようとしているらしかった。
「うるさいんだよ、このおたんこなす。私が行くって言ったら行くのよ」
髪を振り乱してヒステリーをおこすマリラの姿に、大地もアルフレッドも口をぽかんとあけたまま、あっけにとられてしまった。
そしてレッドアロー号からの通信はぷつりととだえた。
「せっかく美人なのに、『おたんこなす』だってさ。…百年の恋もさめるねぇ…」
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