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向かい合う両者の表情は存外に爽やかなものだった。
いがみ合うわけでもなく、にらみ合うわけでもなく、ただ目の前の相手との戦いを心の底から楽しみにしている、そんな表情だった。
「貴様を倒すことだけを考えてきた」
「俺の中でジューダに勝ったことは一度もねえ、今日こそは勝ち星を貰うぜ」
決勝の場にそぐわない和やかな雰囲気。
いつもの二人が醸し出す雰囲気のまま、両者は相対している。
実際の所を離してしまえば、準決勝でセリアが負けたのが予想外だった遼牙。
それもそのはず、オリジナルを取り込んだセリアは、その力を十全に発揮できる。
その状態であれば俺の技以外の全てが通用しなくなる。
彼女、セリア・アリアンロードが理を定めた世界なのだ、その理の中で生きる俺達が敵うはずもない。
並みの超越者が扱える力程度ではその理を超えることは不可能なのだ。
しかし、セリアはそれを使わなかった。
あくまで自分が体得した力だけを使い、ジューダに挑んだ。
だから負けた。
訓練でオリジナルの力に近い物を多少扱えるようにはなったが、それもオリジナルと比べればはるかに格下の、下位互換などという言葉では不相応な程微弱なもの。
それでは理に逆らうこともできない。
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